ブラックパンサー/原題 Black Panther

〓FILMMAKERS

監督・脚本 RYAN COOGLER、原作 STAN LEE & JACK KIRBY、製作 KEVIN FEIGE、製作会社 MARVEL STUDIOS、配給 WALT DISNEY STUDIOS MOTION PICTURES、公開 🇯🇵2018.3.1 🇺🇸2018.2.16、制作費 2億ドル(約200億円)

〓CAST

CHADWICK BOSEMAN(ティ・チャラ国王)、MICHAEL BAKARI JORDAN(戦闘のプロ・従兄弟エリック・キルモンガー)、LUPITA NYONGO(ヒロイン 国際スパイ 恋人ナキア)、DANAI GURIRA(親衛隊長オコエ、『ウォーキング・デッド』)、MARTIN FREEMAN (ロスCIA捜査官、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』)、ANGELA BASSETT(母ラモンダ)、WINSTON DUKE(山岳部族 ジャバリ族リーダー ゴリラ エムバク)、LETITIA WRIGHT(天才科学者 妹シュリ、『レディ・プレイヤー1』)、DANIEL KALUUYA(国境警備部族ボーダー族リーダー ウカビ)、ANDY SERKIS(悪役ユリシーズ・クロウ、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』クロウ、『ロード・オブ・ザ・リング』ゴラム、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒・最後のジェダイスノーク、『猿の惑星/創世記・新世紀・聖戦記』シーザー) 

〓概観

 マーベルスタジオ最新作、来月訪れる地球最大の危機(4月27日公開『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』)により他のアベンジャーズメンバーと共に協調して戦うことになるブラックパンサーが主役の第1作目、インフィニティ・ウォーで鍵を握るワガンダ国とブラックパンサーへの理解をより一層深めてもらうための作品でもある。

 ストーリーは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の中で描かれたワカンダ国王の死後、王位を継承するティ・チャラ新国王(ブラックパンサー)の誕生と、新しい王家を脅やかす驚異との戦いを描く。キャプテン・アメリカの盾にも使われているヴィブラニウムを産出するワカンダ国の秘密が本作で明らかになる。

 スタッフもキャストも黒人主体の作品、主な登場人物での白人は悪役クロウとCIAロス捜査官の二人だけだ。広大な美しいアフリカの大地を背景に、引き締まった黒い肌が生き生きと躍動する。スーパーヒーローなのに市井の人々と同様に様々な問題に葛藤する姿が描かれるのは他のマーベルスタジオ作品と同様だ。

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〓CINEMAEYES

ブラックパンサー

アメコミデビューは1966年、今年で生誕52年を迎える黒人スーパーヒーローだ。歴代ワカンダ国の国王がブラックパンサーを受け継ぎ、裏の世界でワカンダ国への災いを防いできたようだ。

・ワカンダ国

国王は国内の部族の合議制で決められる、候補者が二人以上いると命をかけた決闘で決められる。昔々より世界に対しては自国の情報を開示せずアフリカの一農業国を装ってきたが、実は科学技術が飛び抜けて発達している豊かな国だった。世界のうねりの中で上手に生き残って行くため各国にスパイを送り込み情報を収集しているようだ。超金属ヴィブラニウムは国の宝。そのポテンシャルを知る故、国内で使用するのみに留め、世界への供給は混乱を招くとしてその存在を隠し続けてきた。国レベルでのスーパーヒーロー国だ。

・時代背景(2つ)

 1990年代アメリカ:銃犯罪、警察官による黒人への暴力など、父ティ・チャカ前国王の弟(叔父)による「このままほっておけない、ワカンダの力で支援すべき」との言葉で表現されている。

 混沌とした現代:国連の会議場の中でティ・チャラ新国王は演説する「国は、壁を作るのではなく、手を差し伸べるべき。今こそ地球全体が一つにまとまるべきである」と。そして、ワカンダ国はこれまでの殻を破って国際社会に様々な支援を行うことを宣言する。まるで現在のアメリカに代わる新しい国際的リーダー国が誕生した様な描かれ方だ。現実の国際社会においても地球は一つという世界観を世界各国が表明して欲しいものだ。

 作品終盤、ワカンダ国が実際に始めた支援の様子が描かれる、黒人の男の子たちは目を輝かしている。人類の未来を託す子供達には、まだ民族の壁の意識は低い。国の、そして家庭の教育次第ではいつの日かきっと一丸となれる日が来るはずだ。

・『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のその後

 シビル・ウォーの最後、国連やアイアンマンを敵に回したキャプテンとバッキーがブラックパンサーに保護されワカンダ国に匿われていた。その後、ワカンダ国での二人がどうなったかはとても気になるところ。エンドロールの後、重症から回復したあの人がほんの一瞬出てくれます。

カメオ出演

 マーベルスタジオ作品に毎度ご登場の原作者スタン・リーさん、今回は韓国のカジノバーでのシーンでお会いいただけます。筆者は昨年12月の東京コミコンで一緒に写真撮影をして頂きました。

・ヴィブラニウム

 昔、宇宙からワカンダ国に落下した隕石がヴィブラニウムだ。キャプテン・アメリカの盾に使用されており既にお馴染みの金属だが、ここワカンダ国では医療から武器に到るまで、ありとあらゆる用途に平和利用されているようだ。

 不思議なのがマーベル作品を縦断して描かれるインフィニティ・ストーンのような蒼白い光でも表現されていることだ。高密度エネルギー波のような武器だけではなく、ワカンダの新国王がブラックパンサーの力を得るために煎じて飲むフキノトウの形をしたハーブまでもが同じ輝きを放っている。この輝きはヴィブラニウムに起因するのか?

 それにしても、キャプテン・アメリカの盾(シビル・ウォーではトニー・スタークに「これは父(ハワード)が作ったものだ」と言われ取り上げられた)のヴィブラニウムをハワード・スタークはどの様にして入手したのだろうか?ワカンダ国はその当時も国外流出しないよう厳重に管理していたはずなのだが。

リニアモーターカー

 ワカンダ国の街中を縦横に疾走している。採掘したヴィブラニウムを運ぶのにも使用していると紹介される。リニアモーターを駆動する磁石が磁力を放つとき、ブラックパンサーのヴィブラニウム製スーツは威力を失ってしまう。

・シールド

 ワカンダ国のハイテク首都は全体がシールドで覆われ、アフリカの広大な風景にカモフラージュされている。スター・ウォーズで多様されるシールドだが、マーベル作品の中ではこれまでの中で最大級かもしれない。ただし、防御力がどの程度あるかは不明だ。

 王宮内での戦いに際しては、部族が纏う布のマントを重ね合わせることでも簡易なシールドを形成していた。

・ホログラム通信

 ワカンダ国で使われる通信手段は、手の上で、3Dで上半身がカラーで表現されるホログラムだ。現在のスマホに変わる次の通信手段の派生系の一つになるかもしれない。既にホログラム電話実験は現実社会で成功しているのだ。

・遠隔運転と遠隔操縦

 韓国国内で悪役クロウを追跡するカーチェイスに使用されるレクサスと、ワカンダ国内でヴィブラニウム輸送機を撃ち落とす国王のジェットがトマホーク(ミサイル)を操縦する様にワガンダのラボからの遠隔操縦技術で運転されていた。

 地球上どこにいてもおそらく通信衛星を介しているであろう高速通信で操縦可能なのだ。これなら危険な任務を遂行するのは最小人数で済むし、ドライバーやパイロットの命の危険はない。ただし、この技術を安易に紛争に持ち込むのは止めて頂きたいところだ。 

〓関連作品

 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)』、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018.4)』 

〓リンク