北の桜守

 比較的、耳にすることの少ない先の戦時下の樺太(サハリン)から物語が始まる。厳しい北の大地、新天地を求めた人々は肩を寄せ合って暮らしている。舞台は恵須取から大泊を得て樺太からの引揚先の網走へと移っていく。

 実は、筆者の祖母の生まれはソ連国境に近い恵須取(ウグレゴルスク)だ、「恵」をとって恵美子という名前なのだ。祖母からは何度も樺太からの引き上げの話を聞かされたものだ。だからこそ、この作品への筆者の思い入れは並々ならぬものがあるのは確かだ。小笠原丸(劇中)・第二新興丸・泰東丸の3隻の疎開船が攻撃により沈没するが、これらへの乗船は間に合わなかったのが幸いしたとのこと(その後、ロシア人家族と共同生活を送る抑留生活を経てから送還され函館の引揚者住宅に住んだという)。

 劇中、おにぎりを握るシーンがある、吉永小百合はこのために150個のおにぎりを握って練習してきたという。コンビニのおにぎりは時折食べるが、てつが握ったおにぎりはその味がスクリーンを通じて伝わってくるようだ。

 「母さんのことは今日限り忘れるの」のシーンがある、大切な子供だからこそ獅子のように谷底に突き放し、親を超えて羽ばたけというメッセージなのだ。

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