グレイテスト・ショーマン/原題 THE GREATEST SHOWMAN

〓DATE

2018.01.25 木曜日 試写会、2018.01.25 木曜日 試写会、2018.02.17 土曜日 12:20 Screen10

〓FILMMAKERS

監督 MICHAEL GRACEY(初監督作品)、楽曲 BENJ PASEK & JUSTIN PAUL(ラ・ラ・ランド)、配給 Twentieth Century Fox Film、公開 🇯🇵2018.2.16 🇺🇸2017.12.20、105分、製作費$84百万

〓CAST

ヒュー・ジャックマン(P.T.バーナム)、ザック・エフロン(フィリップ・カーライル)、ミシェル・ウィリアムズ(チャリティ・バーナム)、レベッカ・ファーガソン(ジェニー・リンド)、ゼンデイヤ(アン・ウィーラー)、キアラ・セトル(レティ・ルッツ:ヒゲ女)、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世(W.D.ウィーラー)、小森悠冊(チャン)

〓ご注意

以下の文章にはネタバレを含みますのでご注意ください。

〓概観

 実在したアメリカの興行師、P.T.バーナム(1810年-1891年、リングリングサーカスの前身のサーカス創設者、「バーナム効果」の語源)のサクセスストーリーを描く。子供からお年寄りまで楽しむことができる感動的なミュージカル映画だ。19世紀のアメリカを舞台に、家族愛・事業への挑戦・いじめ・身分差別・人種差別・歌・ダンス・サーカスが105分の上映時間の中にぎっしりと詰め込まれている。目まぐるしいストーリー展開、圧巻の歌とダンス、これらが次々と繰り出される。

 これまで本作を3回鑑賞したので、素人目にも一つ一つのシーンがとても意味深く、じっくりと作り込まれているのがよ〜く伝わってくる。観る度に新たな発見があり、とても楽しんで観れるのだ。冒頭の迫力あるミュージカルシーンからエンディングまで、サーカスショーを中心とする映像と楽曲に圧倒されて、鑑賞後は誰しもが感動に包み込まれるはずだ。

〓楽曲・ダンス(サウンドトラック盤と共に)

ヒュー・ジャックマン

 あのX-MENウルヴァリンがミュージカル?野獣ウルヴァリンは筋骨隆々ムキムキのキン肉マン超肉体派のはずだ!昨年の秋頃だったか、本作の予告が劇場で流れ始めた時はそのイメージギャップが大きく(ヒューがミュージカル?)、にわかに信じられなかった。しかし、ヒューはミュージカル『レ・ミゼラブル(2012)』でも主演を務めているのだ。『LOGAN/ローガン(2017)』撮影の頃もヴォイストレーニングを積んでいたそう、圧倒的な迫力ある歌声を聴かせてくれる。

ザック・エフロン テレビドラマ『ハイスクール・ミュージカル』の主人公ザック・エフロンはすっかり大人になりヒューと並んで歌にダンスに存在感を示す。

 ヒューとの歌の掛け合いになる「The Other Side」はバーテンダーも入れた3人のダンス、3人の息はピッタリでこのシーンはヒゲのバーテンダーがいい味を出している、陰の主役の一人だ。

 最後に繰り広げられる巨大ミュージカル「The Greatest Show」、ポトマック川河畔だろうか?再びサーカスショーを再興した巨大テントの中、家族の元に戻るバーナムから例の帽子を受け取ったフィリップはショーの主役を引き継ぎ、♪This is the Greatest Show♪ と歌いながらスポットライトを浴びるショーの中心に躍り出る、かたわらにはアンが寄り添う、そこには頼りなげなフィリップはもう居ない、実に堂々とした後継興行師の姿なのだ。

ゼンデイヤ

 ザック・エフロンゼンデイヤが恋心を歌う「Rewrite the Stars」、この曲でゼンデイヤは見事なハーモニーを聴かせる。ゼンデイヤの職業は女優・ダンサーそしてシンガーソングライターだ、音楽活動ではビルボードにもランキングされる実力も実績も兼ね備えた本当の歌のプロなのだ。『スパイダーマン:ホームカミング(2017)』の MJ役よりも、本作の歌って踊れるアン役の方が板に付いているのかもしれない。

レベッカ・ファーガソン

  スウェーデン生まれのレベッカ・ファーガソンは、ヨーロッパで名を馳せるスウェーデンのオペラ歌手ジェニー・リンド役(1850年から実際に米国巡業)、その歌声はあまりにも素晴らしく、劇場に足を運んだすべての人々を魅了する、あのヘラルドのベネット記者をもだ。口、喉、舌の動きがアップになって映し出され、その息遣いまでもがはっきりと伝わってくる。曲は「Never Enough」、少しずつ次第に盛り上がっていく名曲だ。

 でも、サントラ盤をダウンロードしてみた方はもうお分かりかもしれない、これはレベッカ・ファーガソンによる余りにもリアルな口パク⁉︎   それで思い出すのが『ストリート・オブ・ファイヤー1984)』、ロック歌手エレン・エイム役のダイアン・レインがステージ上でカッコ良く歌うが、この映画のサントラCDを買って初めて分かった、ダイアン・レインの名前がない!その頃の私はダイアンが歌っていないことなど、疑う余地もなかったのです。

・キアラ・セトル

 キアラが迫力の体格で強力な歌声を聴かせてくれる「This Is Me」はアカデミー賞主題歌賞ノミネート、ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞した曲で、この映画の主題歌にもなっている。ビルボードでも1位を獲得、そう、この映画の主題歌はヒューをはじめサーカスメンバーや観客も一体になって歌う『The Greatest Show』や『From Now On』ではないのだ。

 上流階級のパーティーを締め出されるシーン、もろに身分差別を受けてすっかり沈み込むサーカスメンバーの面々、その中からキアラが頭を上げる、サーカスメンバーの先頭に立ち、We are warriors! ♪ と歌いながら迫力ある行進をする、この曲は歌詞もメロディーもコーラスも実に世界中の人々をも元気にさせる曲だ。試写会では話題の登美丘高校ダンス部もこの曲を元気良く踊っているのを観ることができ、元気を貰えた!

 マオリ族の血を継ぐキアラは大柄な体格を活かしてブロードウェイ・ミュージカルで活躍する。映画出演は本作でわずか2作目、来日した際は「私の人生を変えた曲」と言っていた。

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〓CINEMAEYES

・時代背景

 19世紀のN.Y.マンハッタンが舞台。蒸気機関が街中から地上を走る、駅の始発駅が近いから今のグランド・セントラル駅だろうか?写真技術、印刷技術が一般的になっておりヘラルド紙の印刷に生かされている。

・ヘラルド紙ベネット記者

 P.T.バーナムのショーをいつもフェイクやペテンなどと批判、上流階級を主たる購読層とする新聞への掲載を続け緊張感を与える存在だ。しかし、最後にはバーナムに対して放火犯が捕まったことを伝えに来て、ウィスキーを差し出す。バーナムが人種や外観(unique person)の壁を破ったことに対し「人類の祝祭(human festival)」と賞賛する。アメリカ社会が上流階級中心の文化から大衆文化へと移行していく歴史的なうねりを見つめている。

・バックダンサー

 よく見ると、ダンサー(サーカスメンバー)それぞれが個性的で興味深い。この人はどんな人?と気になってしまうのだ。姿、形は皆異なるが、ダンスシーンになると一体化する。ダンスの腕前は相当なレベルであることが素人目にも分かる。

 映画.com(2018.2.23金 19:30)によると、ダンサーは全員、ジャネット・ジャクソンカイリー・ミノーグ、マドンナ、ビヨンセマイケル・ジャクソンホイットニー・ヒューストンらのバックを務めた経験豊富なトップメンバー、パセック&ポールの楽曲にダンスが振り付けられてあっという間に出来上がったという。

・二人の姉妹

 小学校低学年くらいの姉と幼稚園児くらいの妹のかわいい二人姉妹、この二人の存在も本作ではとても重要だ。ホロリとさせられるシーンがいくつも飛び出し、この映画の観客層を子供からお年寄りまで拡大させる。

 姉妹が登場する冒頭、プレゼントをねだられた父のP.T.バーナムはもったいぶりながら回転する影絵を見せる、するとこのきれいな影絵に姉妹は大はしゃぎ、影絵に願いを込めるといつか叶うと言われ、妹は「サンタさんとの結婚」姉は「バレエシューズを」とけなげに願いを込めるのだ。現代のプレステ・DS・スマホをねだる子供達には爪の垢を煎じて飲ませたくなるシーンだ、世のお父さん方は同様の想いに至るはずだ。

 サーカスショーの中でダンサーと観客が一体になって踊るミュージカルシーン、この姉妹も一緒になってダンスするシーンはかわいさ100倍です。

・印象的シーン15選

 1.冒頭いきなりP.T.バーナムと観客が足踏みしながら一体化する「The Greatest Show」、2.「From Now On」の♪And we will come back home,home again♪ のところで歌詞のとおりレティが首を右上に振りP.T.バーナムに家族を迎えに行けと促すシーン、3.二人の姉妹のダンスシーン、4.バーテンダーと3人のダンスシーン、5.フィリップとアンのロープワークしながらの「Rewrite the Stars」

 6.焼け跡、P.T.バーナムがベネット記者からウィスキーをもらい「人類の祝祭」とさりげなく賞賛されたシーン、7.少年期、パンを盗んだことで痛めつけられた時、異様な顔の女性がりんごを差し出してくれたシーン、8.サーカスショーの直接ヒントを得るシーン、娘からsomething sensational と言われ、娘が読書中の「親指トム/Tom Thumb」を見て銀行で出会った小人症の青年(後の親指トム将軍)を思い出すシーン、9.娘のバレー発表会後、「 臭い、成り上がり、peanut」といじめられるシーン、しかし後年プリマになっているシーン、10.フィリップが初めて出会ったアンから「何をやるの?皆んな(ショーに)出るのよ」と言われるシーン

 11.焼け跡からサーカスメンバーそれぞれが自身の持ち物を見つけ出すシーン、12.バッキンガム宮殿でのヴィクトリア女王との面会シーン(実際に面会している)、13.船舶商社で勤めていた時、窓の外からオフィス風景と墓場の風景が対比的に描かれるシーン、14.たくさんの差別シーン、身分差別(上流階級と中下流階級の差別)、人種差別、障害差別、15.P.Tバーナムがジェニー・リンドに「本物の歌を教えてあげたい」といいジェニーの瞳が釘付けになるシーン、この時代にはまだラジオもレコードもないから舞台で実演するしかなかったのだ

〓日本人

 キャスト 小森悠冊(チャン:実在した結合双生児チャン&エン・ブンカー兄弟)

 スタッフ ゴロー コヤマ

〓P.T.バーナム格言

 「最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」

〓関連作品

『地上最大のショウ(1952)』セシル・B・デミル監督、『ラ・ラ・ランド(2016)』デミアン・チャゼル監督

〓リンク

gaga.ne.jp