(Cinema Voyage)ディズニー帝国の逆襲について思うこと

アベンジャーズ」が終わった今年、私のスターウォーズ熱が上がっている。最新作の公開が控えている今、展覧会が開かれたり、ゲーム「スターウォーズ/ジェダイ・フォールン・オーダー」が発売されたり、ドラマ「マンダロリアン」が始まったりと、とてつもない勢いだ。世界を魅了するマーベルとルーカスフィルム。しかしその裏にはウォルト・ディズニーの天才的な導きがある。どちらもディズニーに買収されたディズニーブランドであり、その規模は計りしれない(独占禁止法違反なのではないのかというレベル)。しかしそれに台頭してきたのは、人気ストリーミングサービス“NETFLIX”である。新たな映画のあり方を世界に向けて提示した。今年それを許さないディズニー帝国は新たなストリーミングサービス“ディズニー+”を発表し、それに伴い20世紀フォックスをも買収し絶対王者の貫禄をみせつけた。それはさながら、ダースベイダー率いる銀河帝国が反乱軍を容赦なく打ちのめす逆襲のよう。映画といえばやはりディズニー、自分もいつかディズニーブランドの一員となれるように初心を忘れずに努力しようと心に誓った。
『DO,or do not.There is no try.(やるかやらぬだ。やってみるなど無い。)』–Yoda
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エンド・オブ・ステイツ 原題_Angel Has Fallen

先週末に、二本の封切り映画を観た。面白いことに、内容が「正義」と「悪」の両極端だった。”ヒロイズム“という言葉を聞いたことがあるだろうか?英雄を欲し、崇拝する。近年のアメリカはまさにそれの塊だ。独立戦争から始まった米国の長い歴史の中で、湾岸戦争や9.11といったダメージがヒロイズムを加速させていった。コミックや映画のヒーロー達はいつも、世界の危機に現れ人々を救ってきた。「エンド・オブ〜」シリーズの主人公マイク・バニングもその一人で、現実世界の真のヒーローは自らの危険を顧みない、消防隊員や救急隊員や軍人、警察官達なんだと教えてくれる。ところが「ブライトバーン〜」では、そのヒロイズムが通用しない。大いなる力を持つものが敵だと分かった時、人々はすがるものがなく恐怖に陥る、なんとアメリカらしくないアメリカ映画なのだろうか。すごい時代になってしまったなあと思いながら、お気に入りの音楽を口ずさんだ。SMAPもこう歌っていた、「ガキの頃から憧れてたけど♪正義の味方は、あてにならない!」

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IT/イット THE END”それ“が見えたら、終わり 原題_It:Chapter Two

世界中のエンタメ業界を、2人のピエロが牛耳っているのを知っているだろうか?日本の映画ランキングでItとジョーカーが1、2フィニッシュをし、R指定作品の記録を次々と塗り替えっている。ペニーワイズ(It)とジョーカーは、狂気なクラウンなのは間違いないが、人は誰しも悲しい現実から目を背け、周りに合わせて笑ってしまう。我々もいわばピエロなのではないかと感じてしまう。私も、妄想と現実が曖昧になってしまう時代を経験した。この2人のピエロは、昔のままの私の末路だ。格差社会に虐げられる人々の代表者として、現在のトランプ政権の時代とも重なり、世界中の弱者の心を掴んでしまった2人のピエロ達の伝説は、悲しくも静かに、喜劇の中の悲劇として語り継がれるだろう。最後に、悩める人に聞いてほしい言葉がある。ジョーカーの宿敵であるバットマンの中のセリフの一つ。”Why do we fall?So we can learn to pick ourselves up.(人はなぜ堕ちる?這い上がるためだ。)

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フロントランナー/原題 THE FRONT RUNNER

大統領になるはずだったゲイリー・ハート 

全てを変えてしまった、1988年。「世界」を「アメリカ」をそして「報道」までも。裏切ったのはマスコミか、国民か、それとも彼自身か。(ソニー・ピクチャーズ)

DATE

2019.2.2 Screen1 TOHO LaLaport

FILMMAKERS

監督 ジェイソン・ライトマン 脚本・原作 マット・バイ「ALL THE TRUTH IS OUT」2014 配給 ㈱ソニー・ピクチャーズ・エンタテイメント

CAST

ヒュー・ジャックマン(ゲイリー・ハート)、ヴェラ・ファーミガ(リー・ハート)、J.K.シモンズ(ゲイリー・ハート陣営)、マムドゥ・アチー(ワシントン・ポスト A.J.パーカー)、J.K.シモンズ(ゲイリー・ハート陣営)

ご注意

以下の文章にはネタばれを含みますのでご注意ください。 

概要

 1988年のアメリカ大統領選、最も大統領に近いとされていたゲイリー・ハート。フロントランナー(大統領選の最有力候補)に躍り出てから、スキャンダルの発覚で出馬断念を決めるまでの数週間の物語。

 アメリカ大統領たる資質には清廉潔白が完璧に求められていた時代、本作は大統領選の厳しさを描くだけではなく、それとの比較で、現在のトランプ大統領を考えさせる作品にもなっている。アメリカ社会で没落したかつての中間層やマイノリティなどの圧倒的支持があればスキャンダルがあっても大統領になれるのだ。

CINEMAEYES

 マスコミとのフリー取材でスキャンダルの質疑が飛び交う、マスコミ重鎮のワシントン・ポスト紙 パーカー記者 が究極の質問をするが、それには答えず「その質問は愚問だ」と一蹴してしまう。そこは明確に否定しなければならない場面だった・・・

 それまで何とかスキャンダル問題を乗り切ってきたにも関わらず、このことで疑いが払拭されず残ってしまう。自身信条、国民、家族、スキャンダル相手、を思うとき嘘は言えない、だから「愚問」とかわすのだが、社会の中では絶対に明言しておかなければならない瞬間が、事の大小に関わらず、人間誰しもあるものだ。
www.frontrunner-movie.jp

ミスター・ガラス/原題 Glass 

“スーパーヒーロー”は実在するか? 3人の特殊な能力を持つ男を対象にした研究と、その恐るべき結末とは?(ウォルト・ディズニー・ジャパン

〓DATE

2019.1.27(日)Screen1(TOHO CINEMAS LALAPORT F)

〓FILMMAKERS

監督・脚本・製作 M・ナイト・シャマラン、製作総指揮 スティーヴン・シュナイダー 製作会社 ユニバーサル・ピクチャーズブエナ・ビスタ・インターナショナル 配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ(世界配給) ウォルト・ディズニー・ジャパン(日)

〓CAST

ブルース・ウィリス(デヴィッド・ダン)、サミュエル・L・ジャクソン(ミスター・ガラスことイライジャ・プライス)、ジェームズ・マカヴォイ(ケヴィン・ウェンデル・クラム)、アニャ・テイラー=ジョイ(ケイシー・クック)、スペンサー・トリート・クラーク(ダンの息子 ジョセフ・ダン)、シャーレーン・ウッダード(ミスター・ガラスの母)、サラ・ポールソン精神科医エリー・ステイプル)

〓閲覧制限
なし
〓ご注意
以下の文章にはネタばれを含みますのでご注意ください。

〓概要

 M・ナイト・シャマラン監督作品の『アンブレイカブル(2000)』、『スプリット(2016)』の続編が本作だ。『スプリット』のラストにブルース・ウィリス(デヴィット)が一瞬出演しており「ミスター・ガラス」とつぶやき、本作に繋げている。

 この3作品に共通して感じるのは、ゆっくりと流れる時間だ。緊迫するシーンになってもゆっくりとじっくりと見せられるから、観る者の緊張度合いも長時間、手に汗握ることは覚悟しておいた方が良いだろう。

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 『アンブレイカブル』でデヴィットとその息子はデヴィットの特殊能力を自覚し、以来、陰の世界で被害者を救い、犯人を成敗してきた。ある日、解離性人格障害を持つ犯人(ケビン)が女子高生を監禁する事件が発生する。

 デヴィットは事件現場が近いと思われる地区へ行き、犯人(ケビン)が監禁潜伏している場所を発見、ケビンの別人格のビーストとの闘いになったところで二人は警察に取り囲まれ、精神病棟に送り込まれる。その病棟には『アンブレイカブル』でデヴィットの敵となった頭脳能力者イライジャもいたのだった・・・

〓cinemaeye

 ヒーロー映画は多数あるが、本作が描くヒーローやヴィランものの世界観は独特だ。世界の均衡を保つための勢力、特殊能力を持つ者を無力化すべく活動している合法的組織があるというものだ。本作に出てくる能力者はスーパーヒーローの様な圧倒的能力ではないから、拘束されるし、命も永遠ではなく、危険能力者とされればこの組織により合法的に抹殺されていく世界が描かれている。

 ヒーローがデヴィットのように分別ある普通の市民だけなら良いのだが、そうではない場合はとても危険な存在となろう。この観点からはこの様な組織はとても重要なものとなる。もし、「エージェント・オブ・シールド」のS.H.I.E.L.Dの様な組織があれば、デヴィットはメンバーに入っていたかもしれなかったのだが・・。そのS.H.I.E.L.Dの元長官ニック・フューリーを演じていたのはサミュエル・L・ジャクソン、今回はミスター・ガラス、悪役だ。

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 アニャ・テイラー=ジョイ演じるケイシーは、『スプリット(2016)』の事件から3年が経過し逞しい女性になっていた。現在はフィラデルフィア動物園に勤務している、そう、あの『スプリット』の事件現場だ。ケイシーはあれから強い女性になったということを表現しているのだろう。ケイシーを幼いころから虐待していた叔父には罪を償わせたとも語っている。

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 シャマラン監督はカメオ出演がスタン・リーさん並みにお好きなよう!『アンブレイカブル』でも『スプリット』でも出演があったが、本作でもカメオ出演が防犯ショップのところで見られます。

 サラ・ポールソン精神科医としてまたまた登場、先週に続いてまたお会いできたのだ。『オーシャンズ8(2018)』『ライ麦畑の反逆児(2019)』と比較的いい感じの役柄だったが、今回は腕に秘密結社の刺青があるちょっと恐ろしい感じの役を演じていた。

 エンディングはガラスの破片が上に流れていく、ガラス破片の中には『アンブレイカブル』や『スプリット』の文字が入っており、3部作になっていることを強く謳っている。
www.disney.co.jp

 

 

 

 

 

 

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー/原題 REVEL IN THE RYE  

孤独のなかで言葉があふれ出す(ファントム・フィルム

〓DATE

2019.1.20(日)Screen10(CINEMA IKSPIARI

〓FILMMAKERS

監督・脚本・製作 ダニー・ストロング、原作 ケネス・スラウェンスキー「サリンジャー 生涯91年の真実」2012、製作会社 ブラック・ラベル・メディア、配給 IFCフィルムズ(米) ファントム・フィルム(日)

〓CAST

ニコラス・ホルト(J.D.サリンジャー)、ケヴィン・スペイシー(ウィット)、サラ・ポールソン(ドロシー・オールディング)

〓閲覧制限

なし

〓ご注意

以下の文章にはネタばれを含みますのでご注意ください。

〓概要

 第二次世界大戦(ヨーロッパ戦線)への出兵を挟んでの、J.D.サリンジャーの創作意欲の変遷、自分を主人公 ホールデン に置き替えた『ライ麦畑でつかまえて(1950)』の誕生、人気作家として大成功を収めるも社会との繋がりを絶つにいたる経緯などが描かれた作品。

 特には壮絶な戦争経験によるPTSD心的外傷後ストレス障害)がサリンジャーに大きな傷跡を残している様子が描かれている。

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〓cinemaeyes

 今年はJ.D.サリンジャー(Jerome David Salinger、1919.1.1~2010.1.27)の生誕100周年、『ライ麦畑でつかまえて(1950、The Catcher in the Rye)』は全世界累計6500万部、日本では村上春樹の新訳でさらにファンが増えたという。人気作家として成功を収めるも自ら身を引いていくのだが、そのことが本人の意図とは逆にサリンジャー人気を高めることになったという。

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 何かの得意的才能に溢れた人は、周りの人を幸せに出来る才能までは持ち合わせられないのだろうか?サリンジャーの場合は自然とあふれ出す言葉の数々をタイプしていくため、時には何日間も家族をないがしろにして創作活動に没頭するのだが、そのことが妻には理解されず、妻を孤独に追いやってしまう。

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 言葉があふれ出すとき、何かの発想を思いついたとき、家族サービスに転じてしまったら、その時の集中力が揮散し、折角思いついた言葉の数々も薄くなって消えていくものだ。ではメモをしたらいいのでは?と思うのだが、サリンジャーの場合はその時にたくさんの言葉が溢れてくるものだからメモレベルの量では足りなかったのだろう。

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 サリンジャーはたくさんの良き理解者に恵まれたとして描かれている。特に、サラ・ポールソン演じるドロシー・オールディングはサリンジャーのことを最も理解してくれた一人だったようだ。サリンジャーがもう書くのを止めようと思うと相談した際には、サリンジャーが自らの収益源であるにも関わらず、止めることに理解を示したのだ。

 『オーシャンズ8(2018)』でも サラ・ポールソン は豊かな個性の一人を演じていた。清楚で安定感のある役柄にはピッタリな女優さんだ。

 また、母のミリアム・サリンジャーは最初から最後まで惜しみない応援をしてくれたようだ、『ライ麦畑でつかまえて(1950、The Catcher in the Rye)』は表紙をめくると ´母に捧ぐ´ の一文がある。息子には才能があるとしていつも応援してくれる姿が描かれている。

 『ライ麦畑でつかまえて』を読んだことがある人は文中に何度か出てくる表現が、本作のシーンで実写化されていることに気が付くだろう。この映画を観る楽しみはそんなところにもある。
www.rebelintherye-movie.com

 

 

 

マイル22/原題 Mile 22

〓DATE

2019.1.19 Screen5(T-JOY)

〓FILMMAKERS

監督 ピーター・バーグ、脚本 リー・カーペンター、製作会社 フワイ・ブラザーズ STXエンターテイメント、配給 STXエンターテイメント(米) クロックワークス(日)

〓CAST

マーク・ウォールバーグ(シルバ)、ローレン・コーハン(アリス)、イコ・ウワイス(小包ことリー・ノア)、ロンダ・ラウジー(スノウ)、ジョン・マルコ・ヴィッジ(ビショップ)、CL(クィーン)

〓閲覧制限

R15+

〓ご注意

以下の文章にはネタバレを含みますのでご注意ください。

〓概要

 実在のCIA特殊部隊をモデルに選りすぐりのメンバーで構成された オーバーウォッチ と呼ばれるチームの任務を描くフィクション、地上戦闘チームと情報支援のチームで構成され、その実態は秘密裏にされている。

 ある任務でロシア人の青年を射殺する、その青年の母親がロシア政府情報機関の高官だったことから、オーバーウォッチ を殲滅させる作戦がロシアにより遂行されていく。

 アメリカの輸送機は離陸した、果たしてその後はどの様になったのだろうか?・・・

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〓cinemaeyes

 地元警官役のイコ・ウワイス(小包)が助演男優として重要な役回りとなっている、すごい肉体を持ち格闘技に優れ存在感は抜群だ。インドネシア ジャカルタ出身で『スターウォーズ/フォースの覚醒(2015)』ではハン・ソロの船に乗り込んでくるメンバーの一人を演じていた。

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 ロシアにより周到に仕組まれた復讐劇、ここまで周到に準備を行うものか?と思わせるほどで、アメリカ側の負けを描く作品であるところが珍しい。3重スパイが描かれることもあって少しストーリー展開が分かり難く、筆者の様な映画素人の目にも95分の中では十分描き切れなかった感を受けるのは率直な印象だ。評価サイトのロッテン・トマトでのスコアは23%(2019.1.19現在)となっている。

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 本作撮影には本物の銃器が使用されているから戦闘シーンは臨場感が凄い、とてもリアルだ。また、撮影では大判レンズやドローン、多数のGoProを使用したとのことで、観客はたくさんの角度からの映像情報を観ることができた。
mile22.jp