野性の呼び声 原題_The Call of the Wild

コロナウイルスに世界が落ち込む中、上映開始とともに流れる20世紀FOXのファンファーレを聞き、少し元気が出たのだが、何かが違った。その理由というのが、FOXをディズニーが買収したため20世紀スタジオへと社名が変更されたという、いわゆる”大人の事情“である。ロゴが変わったショックで落ち込むと思いきや、この映画をみていると物凄く勇気が湧いてきた。原作は100年以上前の小説で、主役が全編CGの犬と、まるでハイジのお爺さんのような姿になってしまった名優ハリソン・フォードとあって、正直期待をしていなかった。しかし驚くべきことに号泣し、帰りにペットショップへ犬を見に行く程に感動してしまったのだ。ゴールドラッシュに沸くアメリカで、一獲千金を狙い多くの男たちがやって来るアラスカで、お金持ちの犬だった“バック”が、犬ソリでの仕事や運命的に出会った独り身の初老“ソーントン”との出会いによって、本来の野性の本能が目覚めるというストーリー。近年の実写動物映画は「ライオン・キング」や「ジャングル・ブック」、「僕のワンダフル・ライフ」など動物が英語を話すことが多く、“登場人物”として感情移入が出来た。しかし今作は、最新のCG技術で表情豊かに犬が躍動し、”登場動物“という形で出来上がった、最高の冒険映画だった。まるで親子のように繋がった2人の絆は、映画を作ることを夢みる若者たちや、これから子供達が観て育つワクワクするようなアドベンチャー映画に、大きな影響を与えただろう。

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チャーリーズ・エンジェル 原題_Charlie's Angels

2000年にキャメロン・ディアス主演で大ヒットをし、男を翻弄させるセクシーさと、どんな敵にも怯まず戦う強さで世界中の女性に勇気を与えた「チャーリーズ・エンジェル」。その20年後を描いた本作は、人種もメンバーも一新しパワーアップして帰ってきた。前作では美人過ぎないリアリティのあるキュートさが人気を博したが、時代と共にエンジェルは美貌もスタイルも進化して洗練され、本当に天使のようだった。それにしても今年は強い女性の作品が多い。昨年社会現象となった悪のカリスマ”ジョーカー“と別れ、戦う女性アンチヒーローチームを作る『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/Birds of Pray』やアジアが舞台で男に混じって戦うヒロインが主人公の名作ディズニー映画の実写版『ムーラン』、アベンジャーズ唯一の女性オリジナルメンバーであるナターシャの知られざる戦いを描く『ブラック・ウィドウ』。そして、スーパーマンバットマンが所属するヒーローチーム”ジャスティス・リーグ“のメンバーであるダイアナの過去の秘密を描く『ワンダーウーマン/1984』と、そうそうたる顔ぶれだ。突然だが、私は男より女性の方が偉いと思っている。なぜなら、いつもは優しさと笑顔で元気を与え、仕事の時はクールで冷静に引っ張ってくれたり、出産を経験し家族が増えると尚更に責任感を持つ。家に帰るとだらしなくなる男よりも、何倍もしっかりしているではないか。まさにエンジェルな女性達には、感謝してもしきれない。私にもいつか子供が出来たら、母が一番偉大なんだと教えようと決めた。f:id:cinemaeye:20200229211157j:image

(Cinema Voyage)マンダロリアン 原題_The Mandalorian

これは本当にドラマなのかと疑うほどの高クオリティで、”痒い所に手が届く“というのはこの事かと思い知った。1話だけでそこそこの映画が撮れる程の製作費が投じられており、スターウォーズというコンテンツの偉大さと、ディズニーのファンを喜ばせるプロ意識を感じ取ることができた。スターウォーズをみて育った私は、かなりの知識や裏話を知っているが、オマージュや小ネタが豊富なこのドラマはファンであろうとなかろうと、人それぞれの楽しみ方ができるドラマということがわかった。今年の秋にはシーズン2があったり、ジェダイマスターでスカイウォーカーの師であるオビ=ワン・ケノービのドラマも製作中。さらにはアベンジャーズのスピンオフドラマが10作品近くも用意されている。一体ディズニーはいくら儲ける気なのだろうか。私もいつか天下のディズニーの関係者になると改めて誓った。

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1917/命をかけた伝令 原題_1917

アカデミー賞の発表の影響もあり、映画館は連日大盛況の様子で嬉しかった。今作もアカデミー賞で大健闘をした映画の一つだ。ワンカットで2時間以上も走り続ける今作は、第一次世界大戦という厳しい環境のなかで、そこで生まれる恐怖と命の重みを教えてくれた。かつてはアメリカ人の白人のみがノミネートされるアカデミー賞が、アジア映画や黒人映画がアカデミー賞を獲ることの出来る時代になり、映画自体も新たなステージへ移り変わっていると私は感じる。日本でも『カメラを止めるな!』(2017)のワンカット撮影が話題となったが、ハリウッドでもホームビデオ風の主観映像で怪獣の侵略を体感する『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)や前編一人称のアクション映画『ハードコア』(2015)、パソコンの画面だけで繰り広げられるサスペンス映画『search/サーチ』(2018)など、今までの手法とはまったく違う切り口の映画には、新鮮味があり大きな話題を呼ぶ。さらにVR用やスマホ(縦長)用の映画も製作予定であり、映画という娯楽の進化を日々感じている。スーパーヒーロー映画が大ヒットする時代の中で、流行の変化が激しい観客の求める映画を作ろうと心に決めた。

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バッドボーイズ/フォー・ライフ 原題_Bad Boys for Life

私はアメリカが好きだが、住もうとは思わない。ここ最近はアメリカ大統領選のニュースが報道され、波乱の幕開けとなっているということは言うまでもないだろう。そんなアメリカでは現在、R指定のドンパチアクション「バッドボーイズ」第3弾が三週連続で第1位と王座を守っている。実際のマイアミは警官とギャングが銃撃戦を繰り広げるこの映画ほど危険な街ではないが、いつ現実となるかは分からない。グローバリズム自由主義国家という言葉の意味を勘違いし、悲惨な銃乱射事件や薬物依存、違法難民が後を立たたないためだ。世界を常に動かし影響を与えてきたアメリカの現状を、この映画は示してくれる。トランプ大統領率いる自由の国は、本当に正しいのだろうか?メキシコとの国境に壁を建設、仕事を奪い犯罪をもたらす移民を蹴散らし、誰でも銃を持ち身を守ることが出来る。これは共和党と仲がよいメディアが報道した言葉だが、私は地球温暖化は作り話だと思っている彼らの言うことを信じることはできない。ではなぜガンアクション映画やゲームが大ヒットをし、フェイクニュースが職業になり、女性を軽視する人がトップに立ち、「アメリカは戦争が好き」と世界で言われるのか、この映画が答えをくれた。それはアメリカ人が異常なまでの愛国心を持ち、現実を逃避するはずの妄想や空想が現実世界を支配してしまっているからである。もちろんアメリカ人に限った話ではないし、全ての国民というわけではない。ただ傾向としてアメリカンドリームに踊らされ、世界のトップという自覚を持ちながら迷走する米国に、そして安心・安全や規制を見失うアメリカに、もはやドリームなどあるのだろうか。このような映画がアメリカの犯罪者に影響を与えてしまっていることは紛れもない事実だ。そんな中、ロサンゼルスで州間高速道路を走行中のバスで男が発砲し、多くの死傷者がでたあの日と同日、この映画の4作目の製作が発表された…。

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(Cinema Voyage)ワイルドスピード/ジェットブレイクの予告編が公開された!!

今年のハリウッド映画の中で、最も興行的に期待される映画の一つが「ワイルドスピード/ジェットブレイク」である。1作目では、違法な車の改造やレース、窃盗などを行った主人公達も回を追うごとに良い人になり、9作目となる本作では世界を救うべく車と共に犯罪やテロに立ち向かうヒーロー集団にまで登り詰めた。全作に共通するのは、ファミリーの絆や仲間を思う気持ちが人を変え、そして強くするという不変の心理を描いている点だ。日本人は親しい人や大切な人にしっかりと“愛”を伝え、些細なことにも感謝をするという行動を躊躇してしまう傾向があるように思える。どんなに厳しい状況や逆境にさらされたとしても、仲間との愛や絆が無限の可能性を持ち、強力なパワーになるというとても大切なことを、ワイルドスピードはいつも教えてくれる。カーアクション好きのみならず、大切な誰かと一緒に観たくなるこのシリーズも残り2作品となった。思春期であるこの時期に出会えたことは、私の貴重な財産だろう。

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ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密 原題_Knives Out

遺産相続や遺言をこの歳で考えることになるとは、夢にも思わなかった。「お金はオッかねー」なんて言葉もあるが、本当にその通りだと思う。実際多くの人はお金の為に働き、賭け事や借金をしてお金に首を絞められている。嫌いな血縁者がいても、莫大な遺産を持つ者だと分かった途端、人は手のひらを返すように豹変する。時には殺人事件に発展するケースすらある。そんな時に頼りたいのが、この映画の主人公ブノワ・ブランのような名探偵だ。今までの私立探偵といえば、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロ、バットマン/ブルース・ウェインなどクールで仲間の多い人間が比較的に多い。しかし今作では、まるで事件を楽しんでいるかのように振る舞う狂気の探偵が主人公で、新たな名探偵の誕生を目撃することができたと思う。いつかこんなオールスターキャストと仕事ができるように一歩ずつ歩みたい。

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